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2つの証明法の比較

4.3 の物理の教科書に載っている証明法は,幾何学的,直感的で 分かり易い.それに比べて,4.4 の数学の教科書に載っている公式 によって実行した証明は,解析的計算が主になっているように見え, 初学者には分かりづらい.しかし両者は全く同じものである.

 \begin{displaymath}
d\bm{S} =\left(
\frac{\partial \bm{r}}{\partial u}\times
\frac{\partial \bm{r}}{\partial v}
\right)dudv
\end{displaymath} (9)

となっているだけなのであるから. そのことを分かり易く,きちんと教えておかないと,学生は物理と 数学とでは別々の事をやっているように思ってしまう. 物理を教えている人にそれを要求するのは,少々筋違いのように 思われる.やはり数学の担当者の役割であると考えるのが如何なものであろうか.

(9)式の左辺は,曲面の微小部分の面積を表しており, その意味するところはやや不明瞭である.それに対して,右辺は, 曲面の接平面の微小平行四辺形の面積を表しているので,その意味は 明瞭である.不明瞭な理由は,物理の教科書では,曲面の面積も 天与のもので自明であるかのように取り扱っているからである.

高木貞治:解析概論に従って,その定義を述べれば,次のようである.


  
図 3:
\scalebox{0.5}{\includegraphics{g3.eps}}


[定義2]      曲面 S を小区域 $\sigma_i$ に分割し,$\sigma_i$ の任意の点 ${\rm P}_i$ における接平面 T の上への $\sigma_i$ の正射影を $\tau_i$ とする. 分割を細かくしていったとき, $\sum_i\tau_i$ が一定の極限値を 有するならば,その極限値を S の面積と定義する.      $\diamondsuit$

曲面 S が具体的に

 
r =r(u,v) (10)

と与えられれば,この定義にいう $\tau_i$ は,(9) 式の 右辺に他ならない.ベクトル場の曲面 S 上の積分は (7) 式の右辺に従って計算しなければならない.3節で述べたような計算は, 電界 E が逆2乗という特別な形をしていたからできたのである.

それにつけても,定義2の曲面の面積の定義は不自然である.直感的には, 曲面の内接する多面体の表面積の極限として定義したいところであるが, それではうまく行かない.そんな例としては,円柱形提灯の例が 有名である(解析概論,365頁).結局,「面積は天賦でなくて,我々 が自ら定義して,自ら始末せねばならない」のである (解析概論,324頁).という事になる. 今まで問題にしてきたことは,結局定義の問題,言い換えればコンセプトの 問題である.そのあたりの事を,学生に丁寧に,はっきりと説明した方が 良いのか,しない方が良いのか,判断が難しい.先生方の御意見を お伺いしたいところである.



Shiro Sawada 平成12年4月25日