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「電気系学科における数学教育の諸問題」

  平成11年度教育方法改善共同プロジェクト(高専における数学教育の見直し)

 今回のテーマ「電気系学科における数学教育の諸問題」

 1.日  時  平成11年12月9日(木)
         13時00分〜17時00分
 2.場  所  三豊郡詫間町,詫間プラザホテル
 3.日  程
   13:00        開 会     
   13:00-14:30 数学と電磁気学
                 議 題:数学と電磁気学
                 講 師:河田純(詫間電波工業高等専門学校)
   14:30-14:45 休 憩       
   14:45-15:45 数学と電気回路,制御理論
                 議 題:数学と電気回路,制御理論
                 講 師:山本幸一郎(詫間電波工業高等専門学校)
   15:45-17:00 自由討論
   17:00        閉 会
   17:00-19:00 懇親会 
 4.助 言 者
    薩摩順吉(東京大学教授)
    谷野哲三(大阪大学教授)
    前田 茂(徳島大学教授)
 司会:詫間電波工業高等専門学校長 布川 昊

『数学と電磁気学(電気系学問)』についての雑感

詫間電波工業高等専門学校 情報工学科 河田 純

「電磁気や電気回路、電子回路は目に見えない物を対象にして、頭の中で 想像しながら理解していかなければならない科目である。従って、それが理解 できるようになれば柔軟な考え方が身に付く。そのためには数学が必要であ る。」と考えているのだが、なかなか理想通りにはいかない。

電磁気で必要な数学項目を次表に挙げる(簡単に)。電磁気の学習項目は、 大別すると電気と磁気に関する項目になり、どちらか一方が理解できていれば 他方はその応用である。現在使用している教科書では、電気に関する項目を先 に学習する。その時に必要な数学項目は「9.簡単な微分積分」までである。前 期期末試験までにこれらを修得しているはずだが、後期、磁気に関する項目を 学習する際、先に学習しているはずの電気に関する項目及び関係の数学項目(1〜 9)を再度復習しながら進めなければいけない。電磁気に必要な数学だけでもこ の様子なので、数学の授業では内容を進めるよりも復習の時間の方が長いので はないだろうか。どう講義を進めているのか不思議である。良い方法を教えて 頂きたい。

数学の項目

1. ベクトル(表示法や重ね合わせ)
2. ベクトル(内積)
3. 簡単な微分(傾き)、積分(線積分)と偏微分(簡単な計算と概念)
4. 体積分と面積分(簡単な計算と概念)
5. 発散とその概念
6. 立体角とその概念
7. 簡単なポアソン方程式とラプラス方程式
8. テ−ラ−(マクロ−リン)展開
9. 簡単な積分と微分
10. ベクトル(外積)
11. curl(渦)
12. 簡単なスト−クスの定理とその概念
13. 簡単なベクトルポテンシャルとその概念
14. 波動方程式とその簡単な解

試験問題は毎年ほぼ同じ(基本的問題を出そうとすればそうならざるを得な い)にも関わらず、勉強して良い点を取って頂けない。講義方法、内容共に不 備な点があるためだと考えられるので、試験問題と類似内容の特別補講を試験 前に行っている。それでも理解して頂けるのは3割ぐらいの学生だけである。 他高専の先生が、「試験問題と答えを試験前に配布しても勉強してくれない」 と嘆いていたのに比べると補講を受けて(少なくとも何時間かは辛抱しないと いけない)勉強するだけマシなようである。

3年からの専門課程で、電磁気を含め電気系科目を最初から毛嫌いしている 学生が増えている。1,2年の間に何が起きているのだろう。将来、更にこの傾 向が強まるようであれば、弱電系科目を教えている学校であるが、電気系科目 を教えるのは無理なように考えられる。特に、情報工学科においては、本当は 数学や電気の知識が必要なのだが、コンピュ−タ(プログラム)さえ扱えれば良 いと考える学生も多いようである(実際はそれすらなかなか身に付いていない ようである)。少し前までは、授業中や後に質問攻めにあったり、喧嘩腰でや り合うような学生がいて張り合いがあったが、最近は講義、工学実験、試験後 はいつも空しさだけが残るようになってきた。

電気回路・制御理論と数学について

詫間電波工業高等専門学校
 電子制御工学科 山本幸一郎

1.
まえがき
 高専においては,数学教育と専門(工学)教育の関係(あるいは対立)が しばしば話題となる。本プロジェクトは高専における数学と専門教育間にあ る問題点を整理し,連携を深めることによって高専教育の改善をはかること を目的としている。このテーマは筆者の能力を超えたものであるが,高専教 育に携わる者として日ごろ考えていることを箇条書き風にまとめたのが本文 である。なお,本文は平成11年12月に開催された本プロジェクト会議 において“電気回路・制御理論と数学”について私見を述べるために作成 したメモを加筆,修正したものである。
2.
電気回路と制御理論について
1)
本校電子制御工学科では1年(混合学級)の「基礎電気」のはじめに電気・電子工学 への導入として直流回路を教えている。2年(混合学級)の「電気回路I, 3年の「電 気回路II」でいわゆる交流理論,簡単な過渡応答と回路網理論の基礎的な概念を教え ている。交流理論でつまづく学生が見受けられるが,これは微分・積分の基本的な事 項の理解不足であること,および複素電圧,電流導入の意味を理解することが困難(そ の一因は微分・積分の理解不足にある)であることに原因があると思われる。複素信 号は電気・電子工学のみならず工学一般に必須な概念であることを考えると,この理 解不足の解消は専門教育にとって大きな課題であると思われる。

2)
制御理論に関しては,3年の「制御工学I」(必修)で古典的な 制御理論,4年の「制 御工学II」(必修)で現代制御理論,5年の「制御工学III」 (選択)でディジタル制御 理論を教えている。電気回路に比べ制御理論は学生にとってとっつき難いもののよう に見受けられる。これは,電気回路が物理法則を出発点としていること,また,身近 に多くの電気機器がありイメージし易いのに対し,制御理論は、人為的に定式化され た問題がその出発点となっていること,さらに,数学的な議論が中心であることによ るものと思われる。
3)
電気回路,制御理論いずれにしても学生がつまづく原因として, 以下の3点が考えら れる。
a)
複素数,微分,積分についての基礎事項の理解不足
b)
学生が工学と数学の関係を十分に理解していないこと
c)
教える側が工学と数学の関係について十分学生に説明していないこと
3.
工学と数学について
 学生の勉学意欲を持続させるためには,勉強の目的とその目的に対し現在どの 位置にい るのかを常に提示する必要がある。また,工学においては論理的な思考形態を育 むことが 必要不可欠である。これらのためには以下のような配慮が必要ではないかと思わ れる。

1)
学生に対し,工学の目的とは何か、その目的に向かってどのような 道筋をたどって勉 強をしていくかを繰り返し示すこと。―たとえば,工学の目的は合成(設計)にある が,そのために解析方法を学ぶ必要があること―
2)
物理法則(あるいは問題の定式化)と数学的議論を混同しないよう 示すこと,すなわ ち,どこまでが工学でどこからが数学的な議論なのかを明確に示して教えること。― たとえば、回路網方程式を立てるまでが物理法則であり、それを解き議論を進めるの は数学であること―
3)
「定義・法則」と「定理・性質」を明確に分けて教えること。―数 学でも専門でも、 教科書にはその区別が判然としない記述がかなり見受けられる。低学年の教科書に多 いようであるが、低学年だから理解が困難であろうと考え意図的にあやふやな記述を しているとも考えられるが,(我々が学生に身に付けさせたいと思っているのは論理 的な思考であることを考えると)本末転倒であろう―
4)
必要とする数学は、何故その数学が必要なのかを工学的な目的との 関連を明らかにし て、その都度復習を兼ねて説明すること。―「専門を学ぶ前にその専門で必要となる 数学を学習していない」ことが「工学と数学の関係」で問題となることがあるが,数 学の授業で専門との関連について教えることは一般に困難であり,それぞれの工学で 必要とする数学について言及するのは当然ではないか―
5)
数学および工学の議論において数学的な厳密さを望むことは一般に 困難である。この ような場合には、数学的厳密さを欠いていることを学生に知らせること。

4.
その他
1)
1,2年の一般教科としての数学に対して,専門の教官として筆 者が希望することは 以下の3点である。
a)
数の概念(自然数から複素数まで)に関する理解
b)
三角関数,複素数と対数の関係の把握
c)
微分と積分の基本的な概念の理解と基本的な計算方法の修得
2)
数学,専門教育いずれにおいても,学生が紙と鉛筆を使って計算する ことは訓練であ るとともに,計算を通じて得るところも多い。最近のコンピュータ等の普及に伴い, 教育にも急激にコンピュータが導入されている。コンピュータは視覚的な理解等に便 利であるが,安易なコンピュータの利用は実際に計算する機会の減少につながりかね ないと思われる。

5.
あとがき
 専門教育と数学について私見を述べた。本文作成のきっかけとなった会議 の発表で助言者の東大教授薩摩順吉先生の「ベクトル解析は電磁気で学んだ のであって,数学の講義で学んだことはなかった」旨の発言が強く印象に残っ ている。

教育改善プロジェクトに参加して

徳島大学総合科学部    前田 茂

今回の会合に、助言者という些か面映ゆい立場で参加をさせていただいた。詫 間高専の河田先生・山本先生の現状を中心としたお話をお伺いし、参加者の方々 の有意義な議論を拝聴して、大学にも共通する問題点を改めて認識した次第で ある。

大学生の学力低下が指摘されて既に久しく色々な対策が議論されてきたが、少 子化の波は残念ながら学力低下を全般的な傾向にしてしまった模様である。数 学や物理を始めとする基礎科学分野は、その長い発展の歴史の間に誤謬が捨て られ人々が正しいと信ずるものが現存しているのだと考えたい。だから、電気 であれ、機械であれ、その記述道具に安心して使われるし、理論を作る際の指 針原理を果たす役割をも持つ。大学院を出てから暫時実社会でコンピュータの 仕事に携わった個人的体験からも、数学や物理が儲けることを主眼とする場で 直ぐに役立つことの少ないことも実感としてある。しかし、論理的思考能力・ 理解方法・将来性方向性の把握等、人の根本的な能力には実はこういう基礎科 学の習得が大いに与っているのは間違いない。

数学のような積み重ねの学問を独りで進めていくようになるまでには多くの階 梯を登らねばならない。学生のやる気の持続、それは同時に学生がつまずいた ときの教師側のフォロウが不可欠なのだが、これには熟練・熱意が要ることを 痛感する。学生が分からなさそうな顔になったときは、補足をし雑談をし学生 の顔つきを見て、再び進むように心がけていてて、シラバスで予告した範囲ま で講義が到達しないことが往々にある。カリキュラムの関連性という観点から は好ましくない状態だが、止むを得ない仕儀だと考えている。これには、数学 の1branch をある程度理解できた学生は、他の branch でも結構ある程度ま ではやっていけるものだという思いを持っているからでもある。「それは何故 か」という自問をし、自答できる所まで持っていくのが理想なのだが、残念な がらそこまでの可能性を見出せぬ場合では教育側の努力目標という位置付けに せざるを得まい。これからはカリキュラムの修正や教官間の密な連絡等のきめ 細かな対応が一層重視されてこよう。

一部の機関では既に、少子化現象のため殆ど数学を受け付けないような学生ま で入学させる状況に立ち至っているとも聞く。全般的な学力低下に加え、でき る学生とできない学生との学力差が従来に比べて大きくなっている今日、大学 側へ検討を要求されている項目も幾つか方向が異なっている状況にある。今後、 入学後も学生が適性を踏まえた進路変更を(機関を越えてでも)行うことが容易 になるような、態勢や機運が進んでくるのではあるまいか? 一律な「ゆとり ある教育」は我々が育成すべき理系技術者の質的・量的低下にはとどまらない 危機を招来しかねない危惧を感じている。

とりとめのないことを記して参りましたが、最後に、この会合にお呼び頂きま した詫間電波工業高専布川昊校長先生に感謝を致しますとともに、この会合が 今後益々発展をし実りある成果を挙げられますことを祈念致します。

「電気系学科における数学教育の諸問題」感想

阿南工業高等専門学校
一般教科
 小柴俊彦

河田先生の電磁気学の講義の現状については,低学年で数学を教えている私も 同じ様な状況です. そこで自分で心がけていることを少しですが挙げてみます.

1.
学生によって,代数的に考察すれば理解しやすい者と,幾何学的に考察する方が 理解しやすい者に分かれる傾向があると思われる.そこで可能な限り両面から 考察するように心がけている.
2.
1つの命題の存在を予想することができる分かりやすい方法があれば,命題を きちんと証明するよりも,その方法を重視する.言い換えると,きちんとした説明 よりイメージを大切にする.
3.
学生の質問を積極的に歓迎し,出された質問は他の学生と共有できるように,全 員にもう一度伝えてから答える.
4.
わからないことに出会ったとき,我々がとる立場は少なくとも2つある. 一つは困ってしまうことであり,他方はしめたと喜ぶことである.後者のような 反応を示すことができることは,これから将来にわたって大切であることを機会 がある度に伝えていく.
5.
学習内容を教科書の通りの順序ではなく,できるだけ学生と共に再構築するつも りで進める.
以上のようなことを心がけながらやっています.

しかし学生の理解の程度とやる気の現状は期待とはかなり離れているのかも知れ ません. 十分に演習時間をとり学習内容の定着を図ることが大切ですが,進度を気 にして十分な演習が出来ないまま進める点を反省しています.

会議の議論の中で指導内容を精選して進度を進めるのがよい.三年生のうちには 偏微分も重積分も微分方程式の基礎も教えることができると発言しました.しかし, 帰ってきて授業中の机間巡視中に「微分法の基礎がわかっていません」とつぶやく学 生に,それは学生の努力不足であると嘆きながら,新居浜の川崎先生の学習内容の十 分な定着を図るためにはどの程度の進度が適しているのかというご意見を思い出し た次第です.

布川先生のお話等を通じて再認識したことは,

6.
学生に与えられる学習内容は整理し無駄なく完成された形である.それだけに概 念が発生するきっかけとか,生成される過程の形を自分自身もっともっと勉強す ることはよりよい教科指導のために大切である.

例えば,数学の雑誌に連載されていますように,微積分学の学習における,微分 dx,dy と微分商 dy/dx に対する重点の置き方は微積分学がつくられた時代と現 在では異なっている.すなわち現在では微分商 dy/dx に重点をおいた学習が中心 となっていると思われます.微積分学の発展の歴史をたどることによって微分 dx, dy に重心を移した微積分学を知ることが出来るように思われます.そのことは 微分 dx, dy の指導に役に立つであろうと考えています. また,講師の先生方のお話と全体の討議を通してあらためて認識しましたことは

7.
一般教科の教官と専門の教官の交流を通して,指導する内容の重要性の軽重の度 合いに関する情報等が得られる. そのことは特に進度が1つの問題点になってい る現在,教材の精選と学科に応じた指導の参考になる.そのような1つの理由に限 らなくても,いずれにしても,一般教科と専門の教官の交流の大切さである.
講師の先生方のお話,問題提起をされた先生方のお話,参加された先生方のお話を通 して感じましたことの概要は以上の通りです.

高専における数学教育の研究集会
テーマ「電気工学科における数学教育の諸問題」に出席して

阿南工業高専専門学校 電気工学科
当宮 辰美

今回の研究集会、“高専における数学教育の見直し”テーマ「電気系学科にお ける数学教育の諸問題」に出席させて頂きました。主催者の詫間電波高専の布 川校長を代表として、問題提起をされた河田、山本両先生や諸先生方、さらに 助言者の先生方にお礼を申し上げます。この研究集会を契機に、阿南高専で現 在行われている電気系専門教育と数学教育との関連や整合性についてじっくり 考える機会を下さいました。また、助言者の先生方からいろいろな考え方の異 なった提言を聞かせていただき、本当に有意義に感じています。私は、数学と 制御理論、制御工学の関係で出席し、その感想を述べさせていただきます。  制御工学を教えている先生方の苦労話を聞き、共感することしきりでした。制 御工学自体の教えることの難しさばかりでなく、そこで使われる数学知識との 関係を、学生が興味のわくように提示できない無力さを授業の度に痛感してい ます。

○ 数学と制御工学との整合性

今回の会議で一番考えさせられました。本来の意味では、複素数、線形代数、 ベクトル解析と制御工学との関係は、どこまでの内容をどう関連づければ学習 効果が上がるのかの検討であると思います。しかしながら、私の制御工学の講 義においては、「数学の先生を頼っていてはとてもやっていけない」、「必要 な数学的道具は自分で教える」との姿勢でした。本来なら、進度の整合性は当 然のこと、その内容をお互い(電気系の先生方と応用数学はもちろん低学年担 当の数学の先生方とも)定期的に学校内で検討する必要があります。しかし、 現実には数学の先生と個人的な交流はあるものの、専門教官(電気工学科)と 数学教官とが、余りにも相互連絡がなされていないのを感じ、どうにかしなけ ればと思っています。

○ 授業方法の変更

私の講義では、4〜5年にわたる2年間で「未知システムの数学的モデル式の 導出とその制御回路の設計」を目標に授業をしていました。しかしながら、学 生の理解の程度は、平均知的にはこちらの期待とはほど遠いのが現状です。そ こで現在、試行又は思案している点は、1.グループレポートと2.反復講義 です。

1.は水位、温度制御やモータの速度制御など実際の対象を与えて、授業時間 外におけるグループでの制御系設計レポート作成です。この目的は、数学的記 述の必要性と重要性を十分理解して欲しいとの願いで試行しています。2.は、 学生の行動的特性を考慮しての対策です。5年の前期中間までは、学生の学習 意欲はそれほど低下しないのですが、特に後期になると制御性能や補償回路な ど、内容が難しくなることもあり(進路が決まった安心感が大きいのでしょう か)ついてこれない学生が多くなります。そこで、5年前期中間までに制御系 の設計まで進み、再度初めからそれぞれの重要点を関連づけて(教科書全体を 使い)講義をしようと考えています。どの程度効果が上がるのか不安ですが、 ここ5年間ぐらいの学生の理解度の低下を思うと、何かをしなければと始めま した。

最後に、高専の設置基準が一部改正され、教育研究活動等の積極的開示やさら なる組織的な活動が努力目標として義務づけられたとのことです。布川校長が 提言されていますように、各分野で高専ネットワークが活発化して、今後も積 極的な相互交流がなされることを期待しています。

高専における数学教育の研究集会に参加して

阿南工業高等専門学校
 電気工学科
松本 高志

高専における電気系教育と数学教育に関する研究集会に参加しての感想と電磁 気学の講義を担当して日の浅い筆者の感じるところを述べさせていただきます。

電磁気学を講義されている先生からの現状を聞いて大変苦労されている様子が うかがえました。電気工学科以外の実例からは、電磁気学を学ぶことの動機付 けが浅い学生に電磁気学を勉強させる難しさを再認識させられました。

一般数学と電磁気学の関連

本校では2年生の前期から3年生の後期まででマクスウェルの方程式以前の内 容を講義し、4・5年生で電磁波に関する内容を学びます。2年生の前期では 積分はもとより微分もまだ習っていません。やっとベクトルを習い始めたとこ ろです。できるだけ一般教科の数学の進度に合わせて電磁気の講義における数 学の内容を調整していますが、必ず電磁気の講義の中では必要な数学を復習し ながら行っています。しかし、電磁気の初めの静電界においては、電界・電位 を説明するときにはベクトルや積分の記号が頻出します。ここでは、厳密な積 分は説明せずできるだけ物理的意味を説明しています。数学専門の先生にはし かられるかもしれませんが、電磁気の問題を理解するための数学テクニックだ けを教えることもしばしばです。しかし、この場合には一般教科の数学で学ん だことが専門教科で役に立つということで理解の助けとなるようです。当然で すが、電磁気の時間に厳密な数学から説明するとすれば講義時間が不足するば かりか学生の意欲はますます減退いくと思われます。学生にとって、"電磁気" といえば"難しい"という先入観があって最初から拒絶気味の学生もいるくらい ですから。

今後の問題

今後、小中学校におけるゆとりの教育が導入された場合、現在専門教科の中で 行っている数学の補足がますます重要かつ時間を要することが予測されます。 現在の学生でも計算力が弱く、自分から手計算をやりたがらない学生が多いこ とを考えると、ゆとりの教育が導入されることにより、この傾向はますます増 大し電磁気の講義も進めにくくなると思います。現在でも専門教科と数学の関 わりを考えて、電磁気ばかりではなく他の専門教科においても折に触れては数 学の基礎を復習しながら講義をしています。また、同じ内容でも繰り返し説明 したり、学生に答えさせたりすることを心がけています。専門科目で必要な数 学はさほど高度ではなく初歩的な内容がほとんどで、繰り返し訓練をすれば十 分身に付くものだということを、学生に体験して欲しいと考えています。

「談話会に参加しての感想」

高松工業高等専門学校
 制御情報工学科
 石原 弘一

数学談話会に出席させて頂き有難うございました。話題提供を して頂いた河田先生と山本先生に感謝します。河田先生が詫間高専の 「数学と電磁気学」の現状を詳しく分析されていましたが、学生がどの部分の 理解が困難であるかよくわかり、参考になりました。

また、山本先生が3年生から制御工学を教えているとの説明があり、私の固定 観念をすこし変更してくれました。工業高校にも制御に関する授業があると 思われますので必要なことを教えながら進んでいけば、できないことはないと 思い直しています。

布川校長先生が寮生に数学の補講をされているとき、学生が分からないというので 教科書を見てみると教科書には必要なことを書いてないとの御発言には共感しました。 私にも時々、学生が質問に来て分からないと言います。教科書のその部分を見ると 初心者にとってはかなり説明が省略されています。NHKの将棋番組を見ていますと プロの棋士の対局で投了したにもかかわらず、観戦している視聴者にはまだ終わって いないのにとの思いがあるため解説者が最後まで詳しく説明しています。質問者の 心境がそれと似ていて私は時々、将棋の解説者と同じだねと冗談を言いながら説明を します。一般にページ数の関係から教科書は出来るだけ簡潔に書かれているように 思います。初心者にはできるかぎり自力で学習できるシステムが望まれます。例えば、 コンピュータ言語の使い方に関するヘルプファイルに適切な具体例が書いてある場合は 大変、参考になります。それと同じように、高専で学習する内容の数学に関する ヘルプファイルを具体例とともにコンピュータ上に構築できれば、初心者にとっては 大変、参考になるものと思われます。

偏微分・重積分の学習学年を4年に変更するか否か?
新居浜高専 数理科 川崎宏一
1.各高専の状況(敬称略)

高専  先生 3年で教えているか          教科書,コメント
────────────────────────────────────────
阿南  小柴  教えている     大日本か森北 年度毎に,教官が決める
                  進度第一で進む,消化できない問題は解答を配布,

高知  藤井  教えている     大日本(2年前に森北から変更)
    谷澤   進度苦しい     Mathematicaの授業を1年生で1単位:効果あり.

高松  堀江   教えていない   大日本  2,3年の各1単位を演習にしたため偏微
                  分・重積分を4年に変更した.

詫間  中澤   教えている     大日本
    澤田             定着率 〜20%(訪問した川崎の推定)

弓削  藤井   教えていない   裳華房,線形代数のみ大日本
    濱井            電子機械のみ4年で偏微分・重積分を教えている.

新居浜      教えていない   森北 重積分は4年で機械と進学者のみ.偏微分は教
                  えていたが進度が遅れ,平成11年度では極めて苦しい
────────────────────────────────────────
2.結論
 3年までに偏微分,重積分を教えるべきである.
    遅れる原因,定着の悪さ,に対策を打っていくことによって,改善すべき.
    4年の応数でも重要な分野がある:専門の学習上,編入では複素積分の履修を要す
(4年生での定着率は新居浜では10%,詫間では20%)

3.対策案
  1)学生に勉強させ定着率を上げる工夫が必要
      興味を引くポイントの研究,
      授業スタイルの研究
下位1/3(高専を遊び場所と勘違いしている)の扱い方の研究

  2)内容の重点化をはかる
      専門学科との協議がポイント
      教科書の選定:大日本か森北か

教育方法改善共同プロジェクト(数学教育の見直し)に参加して

新居浜工業高等専門学校
電子制御工学科
山田 正史

高専生の学力低下については、以前から言われてきましたし、私自身制御工学 の授業を担当して学生の理解力、計算力が以前より随分下がってきたのを実感 しています。高専に入学する学生のレベルが下がってきたから仕方がないのか なとこれまで思っていました。これに対する対策として、数学については確実 に力をつけてもらうために、専門科目との整合性を確保しつつ、内容の絞り込 みを行い、そのために、これまでも数学、応用数学は各学科ごとの調整を行っ てきました。しかし、現在のところ学生の学力低下傾向は変わっていないと思 います。

一方、制御工学の授業を担当する側からすれば、数学は必要不可欠な知識であ り、道具であるわけで、最低限の知識、計算力は前もって身に付けておいて欲 しいのですが、担当教官の努力にもかかわらず、習ったことが十分に定着して いるとは言えないと思います。これについては、今回の研究集会でのお話から、 四国内の他高専また、大学でも同様の傾向があることがわかり、少しほっとし たような気持ちですが、何か抜本的な対策が必要であることを思い知らされま した。また、このような状況にいたったのも教える側、学ぶ側の双方に問題が あることも指摘されましたが、全くその通りだと思いました。

授業では、もっと計算をしろ、汗をかけ、暗記に頼るなと学生によく言います。 習ったことをすぐ忘れ、計算力が弱いのは、勉強時間が短い(解く問題の数が 絶対的に少ない)からだと私は考えています。精一杯がんばってもできないの ならともかく、努力を惜しむ或いはするのは損だと思っている学生に勉強をさ せる有効な策はないのでしょうか。ハードルを低くするのではなく、やる気を 育てる方法について考える必要があると思います。また、教える側の問題とし ては、学生のレベルを考慮して内容をよく吟味し、よく分かる授業、これは必 要なのだと納得させて、努力したら報われる(成績が上がる)ような授業を目指 す必要があると思います。今のところこのようなあたりまえの方策しか私には 思いつきません。研究授業などを通してお互いに授業のレベルアップを図るべ き時期が来ているのだと思います。

今回、研究集会に参加させて頂いて、諸先生からいろいろと貴重なお話を聞く ことができました。私自身にとっても、今後より良い授業を行うためのいい勉 強になりました。ありがとうございました。


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Shiro Sawada 平成12年4月25日