next up previous contents
Next: 若干の応用例 Up: 線形代数学の散歩道 Previous: 行列式と面積・体積

線形変換による図形の変形

2点 p, q を通る直線の方程式は

\begin{displaymath}\bm{x} =\lambda \bm{p} + \mu \bm{q}, \quad (\lambda +\mu =1)
\end{displaymath}

である.これに線形変換 A を施すと

\begin{displaymath}A \bm{x} =\lambda(A \bm{p}) + \mu (A\bm{q})
\end{displaymath}

であるから,2点 Ap, Aq を通る直線に写されることが 分かる.

線形変換によって係数のスカラー量 $\lambda, \mu$ は何らかの影響も 受けないのであるから,線分は線分に,また線分の内分点,外分点は 対応する線分の同じ比をもつ内分点,外分点に写される.すなわち


[定理3]     線形変換によって,

(1)
直線は直線に,
(2)
線分は線分に写され,
(3)
内分点,外分点は保存される.
また,
(4)
平行線は平行線に移され,
(5)
平行四線形の内部は,平行四線形の内部に写される.

<証>     (1),(2),(3) については,上に説明した通りである.(4) の 証明:

二つのベクトル p, q が平行であることは

\begin{displaymath}\bm{q} = \lambda \bm{p}
\end{displaymath}

となる実数 $\lambda$ が存在することである.これに変換 A を施すと,

\begin{displaymath}A \bm{q} = \lambda A \bm{p}
\end{displaymath}

となるから.この結果から,平行四辺形は平行四辺形に写されることが分かり, (3) と組み合わせると (5) が得られる.     

<注>     平行四辺形は線形変換によって,線分に押し潰されること があるが,それも平行四辺形と見做している.      $\diamondsuit$

次に図形の面積について考えてみよう. 2辺が直行する単位ベクトル i, j である単位正方形を, 線形変換 A で写すと,2つのベクトル

\begin{displaymath}\bm{a} = A \bm{i}, \quad \bm{b} = A \bm{j}
\end{displaymath}

で作られる平行四辺形となる.


  
図 7:
\scalebox{0.6}{\includegraphics{fig7.eps}}

このとき,変換の行列は

A = (a, b)

で与えられる.その上,第5回数学談話会で述べたように, この平行四辺形の面積は

\begin{displaymath}\vert A\vert = \det A = \bm{a} \times \bm{b} \quad (2次元の外積)
\end{displaymath}

で与えられる. 勿論ここでの面積は符合つきである. 言い換えれば,単位正方形の面積は,変換 A によって, |A| 倍されたのである.

この事実は,一般の図形に対しても成り立つ. 例えば,図8のような図形(斜線部分)が,変換 A によって |A| 倍されるのは明らかである.


  
図 8:
\scalebox{0.8}{\includegraphics{fig8.eps}}

一般の図形は,小さい正方形の和として,いくらでも精度よく近似できるから, それを変換 A で写した図形は,面積が |A| 倍されることが分かる. よって次の結果を得る.


[定理4]     一般の図形を G,その面積を ||G|| とする. これを線形変換 A で変換した図形 AG の面積を ||AG|| と すると

||AG|| = |A|   ||G||

が成り立つ.ここに |A| は,線形変換 A に伴う行列式を表す.      $\diamondsuit$

この事実と,行列式が面積を表すという事実を組み合わせると, 行列式の積に関する良く知られた結果が得られる.


[定理5]     A,B を同じ大きさの線形変換, |A|, |B| を それに対する行列式とすると

|AB| = |A| |B|

が成立する.

<証>     定理4を認めれば,この事実は直感的には 明らかであるが,以下では厳密な証明を与えておく.次元は3とする. B の列ベクトルを p, q, r とすると

AB = A(p, q, r) = (Ap, Aq, Ar)

となる.ここで

f(p, q, r) = |A(p, q, r)|

とおくと,これは面積の基本的な性質 I, II を満たしているので

f(p, q, r) = k(p, q, r) = k|B|

とかける.ここに,k は定数である.そこで

p = i,    q=j,    r=k

とおくと B = (i, j, k) は単位行列となるので

f(i, j, k) = k = |A|

となり,求める結果を得る.     


next up previous contents
Next: 若干の応用例 Up: 線形代数学の散歩道 Previous: 行列式と面積・体積
Shiro Sawada 平成12年4月25日